投資先企業紹介

有限会社 マロンライフ【事例紹介】

長年の夢を形にした、いちご狩り農園

【立ったまま、手元でいちご狩りができる当社の設備】

 

<出資先の概要(2019/4 時点)>
会 社 名有限会社マロンライフ
代 表 者代表取締役社長 栗木和夫
所 在 地愛知県愛西市
事業内容トマト、イチゴ
出資年月2018/3
出資金額5,350 千円

 

(有)マロンライフは、愛知県愛西市でトマトのハウス栽培といちご狩り農園を運営する農業法人です。代表 取締役の栗木和夫氏はもともと、父親が立ち上げた、創業 60 年を迎える運送会社、栗木運輸㈱の経営者で もあります。 栗木社長はハウスを引き受けてトマトの栽培を始めました。法人として農業を営んでいる実績が見込まれ、さら に遊休ハウスの話が舞い込み、栗木社長は長年の夢でもあったいちご狩り農園を作ることにしました。2017 年冬 にオープンしたいちご狩り農園「いちご夢ファーム愛西」の施設は、解放感があふれ、女性や子どもだけではなく、高 齢者や障がい者のかたも多く訪れます。年々来客数は伸びており、敷地内の育苗ハウスも増設中です。マロンライフは事業を進めるうえで、資本を増強し信用力を高めるためにアグリ社の出資を受けました。当社はト マトも生産していますが、今回は特に栗木社長のこだわりがつまっている『いちご狩り農園』を中心に、当社の魅力 をお伝えしていきます。

 

1.運送会社が農業に参入したきっかけ

― 栗木運輸で青果物の運送をしていたことが、農業参入のきっかけだと聞きましたが、詳しく教えてください。

「そうです、もともと栗木運輸は地元の JA さんのトマトを東海地域だけではなく関西や関東へも運んでいました。 ある日、高齢で後継者のいない農家の方から、『ハウスを壊したら米をやってくれる人はいるけれども、壊すのは忍 びない。ハウスを使ってくれないか』と打診されました。 もちろん、当時も迷いはありました。ただ、声をかけていただいた以上は応えたいという思いで、栗木運輸の一事 業として弥富市で 5,000 平米のハウスを引き受けてトマト栽培を始めました。その後、「農業法人」の要件を満 たすためには主たる事業が農業でないといけないことがわかり、運送業が主の栗木運輸ではその要件を満たすこと ができないため、当時休眠状態だったマロンライフという別会社でトマトの生産を行うことにしました」

 

2.10 年来の栗木社長のいちご観光農園への思い

― そこから、現在のいちご狩り園のハウスのお話が来たということでしょうか。

「当時 JA は遊休状態のハウスの使い手を探していたのですが、一個人の農家がやるには、面積が広いハウスだ ったので、法人でハウストマトの栽培を行っているうちに話が来ました。当初はトマトの栽培用としての話でしたが、 私はいちごをしたかったんです。それも、市場出荷じゃなくて、観光業でもあるいちご狩り園をしたかった」 ― 栗木社長は人が集まる場所を作りたかったのですね。そこで「いちご」を選んだ理由は何でしょうか。 「トマトの市場出荷ではお客様の反応を 見られないので手ごたえを感じにくいのです。 いちごを選んだのは、愛西市はいちごの生 産量は愛知県内でトップクラスでありながら、 市場出荷のみ。観光いちご狩り園が 1 軒も なかったからです。妻の実家がいちご農家 で、いちごは身近だったので、チャンスがあれ ば経営してみたいと考えていました。 うちでは、酸味・かたさ・糖度を考え『ゆめ のか』だけを作っています」

【いちご狩り体験の他、パックでも販売されているいちご】

 

【子供の目線から見える、いちごの様子】

 

3.栗木社長のこだわりが詰まったいちご狩り農園

― 2017 年 12 月に開催した「いちご夢ファーム愛西」のオープンセレモニーには、プロのシンガーを呼び、近隣も 含めた市長 3 名、議員 2 名、そして JA の役員らが駆けつけるなど、盛大に行われたそうですね。このいちご狩り 農園は、設備などさまざまなこだわりがあるそうですが、ハウスを取得してから、実際に営業を始めるまでのことを教 えてください。

「ハウスはもともと葉物野菜用に使われていて、高設栽培をしていた跡や段差が残っていました。はじめはすべて 段差を取り除こうかと思ったのですが、『ちょっと待てよ、この高さにいちごがなったら、子供はいちごを下からも見るこ とができてすばらしいのでは』と思い、そのまま残すことにしました。また、一部いちごの列の間隔を広くとり、車いすで も通れるようにしました。それから、ふつう、ハウスは 管理のために一~二山で分離させるところを、つな げて一つのハウスにしました。実際にお客さんがハウ スに入ると『わー、広い!』と喜ばれます。 メインのハウスは新規技術をすべて導入したもの にしています。また、トイレは女性目線で乳幼児と使 いやすいようにとお金をかけました。また、一番良かっ たと思うのは券売機ですね。オープン当初から導入 していて、受付作業とお金の管理、来客数などすべてがわかります。券売機のおかげで一日 350 人くらい来ても、二人で受付を賄っていけます。また、本社で数値を 確認できるので、人の流れや販売した券の価格がわかるので、分析にも使えます」

 

【いちご狩り農園では珍しい、券売機を導入】

 

― 奥様のご実家がいちご農家であったとのことですが、やはり栽培では協力を得たのでしょうか。

「それはもちろん。いちごの栽培を始めた当初から、特に甥から技術指導を受けるなど、妻の実家には力を借りて います。いちごが豊作になった時の対策まで考えていたのですが、予想に反して 1 年目は計画の 35%くらいの収 量で、オープン記念の式典の際は一人 2 粒と制限しなくてはならない状況でした」 ― いちご農家の技術指導を受けたにも関わらず 1 年目の栽培がうまくいかなかったのは、何か理由があったので しょうか。 「一つは土耕と水耕の違いですね。害虫が大量に発生してしまったんです。 どうにかせんといかん、ということでいろんな人に話を聞きました。そしたら、近隣で上手くやっているいちごの生産 者がいましてね。それで、使っている農薬や、散布方法を聞いて、さらに岐阜県にある農薬のメーカーを訪ねてきま した。そのメーカーでもいちご狩り農園をやっていたので、これは信頼できると思い、メーカーの担当者に実際にうち のハウスの一角を見てもらうようお願いしました。そしたら、きちんと成果が出て、おかげで今年はスタートから好調です」

 

【一面に広がるいちご畑は、解放感いっぱい】

 

4.当社の経営方針と将来の夢

― 栗木社長の今後の夢や目指すところを教えてください。

「栗木運輸、マロンライフ、プランニング・クリキからなる KURIKI グループは今年グループ全体で 40 周年を迎え ます。経営は順調ですが、今後衰退に向かわないよう、今は改革の年度だと考えています。具体的には、各社の 売り上げ上昇と社員の増員、事業承継等を含め、外部のコンサルタントに依頼して、3 か年計画を立て取組み はじめ、今年度はその 1 年目です。自分自身はまだ 68 歳で、生涯現役と考えています。ただ、自分の感性でや っているところは、後継者にそのまま引き継ぐことは無理だと思うので、今マニュアルを一生懸命作っています。 夢はいつか、ここを通年で人が来られる場所にすること。そのために、来るご縁を大切に、次の展開を考えていま す」

 

【通りからよく見える、大きな看板】

 

5.さいごに

栗木社長は日頃から地域とのつながりを大切にされていて、職業体験の受け入れや子供食堂へ野菜の寄付 などの多くの取り組みを継続しています。「チャンスは来るんだけど、いいチャンスばかりは来ない。時にはわかってい ても、悪いチャンスをつかまなあかん」という社長の感性に基づく自然な行動が、人の心をつかみ、お客様はもちろ ん、地域の人からも応援されている秘訣なのでしょう。 開園は 12 月から 6 月上旬まで。特に 12 月から 4 月までは予約が困難な日も多いという「いちご夢ファーム 愛西」。解放感のあるいちご狩り農園、お近くの方は、どうぞ次のシーズンをお楽しみに。