投資先企業紹介

JAうすきたまごファーム 株式会社【事例紹介】

先端技術で「新鮮」「安全・安心」「効率化」を実現

<出資先の概要(2017/5時点)>
会 社 名JAうすきたまごファーム株式会社
代 表 者佐藤 正平(写真は前代表の篠原氏)
所 在 地本社:福岡市中央区那の津5-3-1
     臼杵農場(大分県臼杵市)
     南郷農場(福岡県宗像市)
山口農場(山口県山口市)
     販売部 (福岡県久留米市)
    福岡鶏卵センター(福岡県久留米市)
事業内容鶏卵

九州北部と山口県に拠点を置き、鶏卵事業を展開するJA うすきたまごファーム 株式会社 (以下、JAうすきたまごファーム)。
JA 全農グループとして 、 安全・安心でおいしい卵を、安定的に 供給 する とともに、 地産地 消 による 元気な産地づくりに取り組んでいます。 鶏の飼育舎や卵を集出荷する鶏卵センター (GPセンター)は ICT(情報通信技術)などの 先端技術 を 導入 して、より 効率的な生産体制を 追求 。 専門的人材の採用と育成にも力を入れ、 「 新鮮な卵を 1日でも早く消費者のもとに届けたい」との思い で、 社員一丸で奮闘しています 。

< 平成 28年 4月に稼動した福岡県久留米市にある福岡鶏卵センター >

 

自然に囲まれた最先端施設

福岡空港(福岡市)から宗像市へ自動車で約50 分。緑あふれる山中の小道を進むと、先端技術を凝縮させたJAうすきたまごファームの南郷農場が現れます。3階建てのウインドレス鶏舎は軽量化とコスト削減のため、一部木材を使用。産まれたての卵は鶏舎から延びるバー・コンベアーを伝わり、隣の集卵舎に運び込まれます。卵が詰められたトレイは、トラックに積み込まれ、久留米市の鶏卵センター(GPセンター)に向かいます。その工程はほとんどが自動化されていて、従業員の負担を大きく軽減しています。例えば、卵入りのトレイが貯まると大型のロボットアームが自動で移動するので、従業員が運搬で腰を痛めることもありません。
GPセンターは、全国の鶏卵場に先駆けて、一時的な保管機能を持つ「タワー型システム」を設置しているのも特徴です。一般的にGPセンターでは、卵の洗浄、選別、パック詰めといった作業は、一連の流れの中で行われています。「タワー」では、フォークリフトほどの大きさの装置を使って、選別後の卵を効率良く運び込んで一時的に保管したり、必要な出荷量に応じて取り出したりします。保管可能量は51 万個。大量注文にも迅速に対応できます。
鶏糞処理にも力を入れており、臼杵農場では域外に別途設けた堆肥センターで ①鶏糞をブロア付き攪拌機で調整し袋詰め ②攪拌した後、ペレット加工して袋詰め――と、2通りの堆肥にして、耕種農家が使いやすいようにしています。安全・安心の追求、効率的で持続的な生産、糞尿処理等の環境問題。日本の鶏卵業が抱える課題を、同時並行で解決しようとしているのです。

「新鮮」「安心・安全」「効率化」に向けて経営基盤を強化

JAうすきたまごファームは、平成20 年3月、JA大分のぞみ(当時)が運営していた農場を、JA全農子会社のジェイエイ北九州くみあい飼料株式会社が事業継承する形で設立されました。
昭和30 年代後半から現在に至るまで、国内の採卵養鶏は、中小規模の経営体を淘汰しながら大規模化が進んできました。平成20 年当時、同JAの農場は飼養羽数8万羽。10 万羽以上の経営体が全国の経営体数の6 割以上を占める中で、苦しい経営を迫られていました。「養鶏の火を消さないでほしい」。地元からからの強い要望を受けて事業を続けてきました。
同社が掲げる経営理念の一つは、鶏卵の生産・販売事業を通じて、日本の食糧の一翼を担い、安心で安全な鶏卵を消費者に届けること。業界内での競争が激化している中で、鶏が健康で卵を産みやすい環境を整備して、安全・安心な卵を適正な価格で一定量を供給し続けるには、大型投資をして規模拡大し、鶏舎と関連施設を新調する必要がありました。
まず、平成23 年7 月、第3者割当増資によりジェイエイ北九州くみあい飼料株式会社の子会社になりました。平成23 年11 月にアグリビジネス投資育成株式会社(以下、アグリ社)から3,000 万円、さらに平成26 年5 月には山口農協直販株式会社からも1,000 万円の増資を受け、設備の充実化や地元養鶏業者の買収などで規模を拡大。
現在は、資本金8,300 万円(ジェイエイ北九州くみあい飼料46.2%、アグリ社43.0%、山口農協直販10.8%)、社員117 人、飼養羽数・3 農場(臼杵=大分県臼杵市、南郷=福岡県宗像市、山口=山口県山口市)で66 万6,000 羽、鶏卵販売が約1 万1,800 ㌧。九州北部を中心とする消費者のもとに届けられ、売上高約25 億円。
「新鮮」、「安心・安全」、「効率化」に向けて経営基盤を強化し、国内養鶏業界をリードする経営体への道を歩ん
でいます。

 

 

“付加価値卵”へのこだわり

卵は、輸入飼料でコストを抑え、大量に生産することで小売価格がほとんど上がらず、「物価の優等生」と呼ばれてきました。“当たり前“の食べ物となった一方、生産者にとっては差別化が難しくなりました。飼料で差別化を図ろうとする業者が増える中で、同社は ①安全・安心 ②生産・販売過程の「透明性」 ③生産地や設備、従業員、飼料など卵が届けられるまでの「ストーリー」――これらの要素を備えた卵を、“付加価値卵”と位置付けて、差別化に取り組んでいます。安全・安心を確保するには、鮮度の追求が不可欠であり、先端技術を装備した設備が威力を発揮します。衛生面の追求としては東京五輪を視野に、農場HACCP認証の取得(平成30 年度上期)のほか、鶏卵センターの HACCP認証取得(平成29 年度)、J-GAP認証取得(平成30 年度から取り組み開始)を目標に掲げています。
また、ICT(情報通信技術)活用による生産性の改善やマーケティングの強化に力を入れています。ICTの導入により、各鶏舎の温度や湿度、給水の状態やエサの減り具合等の情報を一カ所で集中して管理したり、遠隔操作したりできるシステムの整備を目指しています。2年がかりで取り組んでいて、既に一部で実現しています。

臼杵農場の近くの山中にある直営直販所。床面積はわずか約40 平方㍍ですが、適度な価格と新鮮さを求める客が連日訪れ、売り上げは年間約7,000 万円。同社の理念が地元消費者に浸透しつつある証しです。

輝くプロフェッショナルの女性社員

先端技術を積極的に導入するJAうすきたまごファームですが、組織を運営するのはやはり人であり、篠原浩二 前代表取締役社長は「意欲ある人材の確保が不可欠です」と断言。社員が生き生きと活動することで、すべての人に貢献し、社会から信頼される会社を目指すことも、経営理念の一つに掲げています。男女を問わず若い世代の正社員の採用を進めていて、畜産の専門的な知識を持つ女性社員も活躍しています。

杉田歩(あゆみ)さん(25)は入社して4年目。大学農学部を卒業後、ジェイエイ北九州くみあい飼料株式会社に入社し、その後JAうすきたまごファームに出向して、現在、農場ソリューション部に所属しています。農場を巡回して、プロジェクトの進捗状況を確認したり、現場が抱える問題を把握して本社につなぎ解決策を提示したりする役割を担っています。いわば、農場と本社をつなぐパイプ役のような存在です。

<南郷農場でも耕種農家が使いやすいよう鶏糞処理が行われている>

臼杵農場にある乾燥鶏糞処理設備(プレート・ドライヤー)も昨年度に仕上がったばかりで(農水省主催「平成28年度農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」採択事業)、想定通りにいくのかどうか、問題は発生していないかなど、チェックして対処していかなければなりません。また、給餌機や卵の洗浄機の故障など本来の業務以外の問題についても、気が付けば臨機応変に対応しているという杉田さん。「堆肥施設は稼働始めてからこの一年が大事。お手本となるような農場にしたいですね」
ときっぱり。
同じく農場ソリューション部に所属する池田真彩(まあや)さん(25)は、ブロイラー企業に勤めていて、堆肥に関わる営業を担当していました。杉田さんとは大学の同窓生です。同社の仕事に「やりがいを感じている」という杉田さんの話を聞いて転職を決意。今年4月に入社しました。杉田さんとともに各農場を巡り、現場の問題解決に当たっています。特に力を入れているのは鶏糞対策。「鶏糞処理は養鶏業者共通の悩み。私たちの取り組みを参考にして、皆さんの悩みが解決すればうれしいですね」と笑顔がこぼれます。

生産部所属の児玉美波(みなみ)さん(19)は大分県内の農業高校を卒業後、平成29 年4月に入社しました。鶏がストレスなく卵を産めるように、飼育環境を整えてあげるのが主な役目です。鶏舎の中に入って、死んだ鶏がいないかどうか、餌がきちんと行き届いているかどうかなど、日々確認しています。
社内会議では同社のプロジェクトの取り組みを聞いたりして、会社の規模拡大と進取の精神が息づいていることを実感しているそうです。「先輩たちのように、早く仕事を任せられるようになりたい」と力を込めます。

< 専門的な知識で活躍する女性社員(㊧池田さん、㊥杉田さん、㊨児玉さん) >

社会に貢献し、誇りを持てる会社に

増資と買収、設備整備などで規模拡大を続け、一部山口県を含む九州北部の食卓を支えるJAうすきたまごファーム。消費者、実需者の要望に応えるための体制は概ね整いました。今後は、ICTの積極的な活用を軸に、徹底した「マーケット・イン」型事業の創出や、鶏卵センターにおける自社農場原卵の比率を6割から8 割に高めること、オーガニック鶏卵の生産などに挑戦していきます。「ICTを鶏の群管理に活用する手法など当社が培ったノウハウは、ほかの畜種でも転用できる」と見る篠原 前代表。畜産業界や一般社会にも貢献できる企業として、持続的に発展していくために「多様な社員が誇りを持って働ける会社にしたい」と述べ、新たな展開を視野に入れています。

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