投資先企業紹介

株式会社 黄金崎農場【事例紹介】

徹底したデータ管理で 500ha の広大な農地を経営

 

<出資先の概要(2018/10 時点)>
会 社 名株式会社黄金崎農場
代 表 者代表取締役社長 佐々木 君夫
所 在 地青森県西津軽郡深浦町
事業内容露地野菜の生産
出資年月2013/8(他 1 回)
出資金額30,000 千円(計 2 件)

(株)黄金崎農場は、青森県の西側で日本海に面する深浦町、津軽富士として名高い岩木山の南方にあ る弘前市に、合計 500ha を超える2つの農場を経営している農業法人です。1976 年に農事組合法人として 設立した当社は、今年で設立 42 年目を迎え、昨年は、念願の本社事務所を岩木農場に建設しました。しかし 当社がここまで来た道のりは、決して順風満帆ではありませんでした。 今回は代表取締役社長佐々木君夫様(以下、佐々木社長)と取締役の佐藤里美様(以下、佐藤専 務)にお話を伺いました。

 

 

1.積極投資が裏目に、経営回復に合わせた出資により経営を安定

黄金崎農場は 1976 年、深浦町で 37ha の農場でスタートし、その後、深浦町で着実に事業を拡大してき ました。1995 年、そんな当社に大きな転機が訪れます。東京の老舗レストランから、弘前市の岩木山のふもとに ある、320ha の農地を買ってくれないかと打診を受けたのです。購入すべきかいろいろと考えた末に、佐々木社長 は、金融機関から 5 億円の融資を受け、この農地を購入しました。しかし、2000 年、当時当社の主力産品だっ た大根の相場が暴落、急速に資金繰りが悪化します。日本最大の露地栽培農家である黄金崎農場に最大の 危機が訪れました。佐々木社長は、全国にいる知り合いの農業法人の社長に対し、支援を求めました。支援を 求められた社長たちは、当社の役員として加わり、経営は回復に向かいます。この時、当社はアグリ社からの出資 により資金の調達を行いました。

― 出資を受けようと思ったきっかけは何ですか。 佐々木社長 「うちは、農場が 500ha と規模が大きく、経営が悪い時、金融機関や一般企業から借入が難 しくなった時期がありました。経営が改善し始め売上が拡大すると、それに合わせて肥料とか資材を大量に使うの で運転資金が大変でした。そんな時、全国から経営に参加してくれた役員の一人から、『JA バンクに、農業法人 へ出資してくれる商品がある、ちょっと使ってみたら』と紹介を受けました」

― 実際に出資を受けるに当たりネックになることはありましたか。 佐々木社長 「ありませんでした。農林中央金庫とアグリ社の担当者が、非常に丁寧に商品を説明してくれま した。そして 2013 年 8 月にアグリシードファンドから 1 千万円の出資、そしてさらに経営が改善する中で、2013 年 12 月に担い手経営体応援ファンドから 2 千万円の出資を受けました。出資は長期間使えるので、資金繰り が安定しました。当時を振り返ると、大変に助かりました」

 

2.500ha の圃場、農地一枚一枚ごとの収益管理を実現

当社は、500ha の圃場があり、その管理方法について工夫をしてきました。農地一枚ごとに番号を振り、それ ぞれの農地について費用と収益を分けて管理をしています。そのデータが 5 年分保存され、次年度の計画に策定 に利用されています。生産管理を担当している佐藤取締役にその方法をお聞きしました ― 500ha の圃場の管理は、どのような方法で行っていますか。 佐藤取締役 「当社の日報は、「予定と実行」を両方記載するようにしています。日報は紙ベースで、明日、ど この圃場で、何を、どれだけやるかという指示と、その指示に対して、私は実際にこういうことをしましたということを書 くようにしています。広い農地の管理は大変で、農地に番号を振る以前は、指示と違う農地に行き作業をしてしま うこともありましたが、今はなくなりました」

 

 

― 社員は、日報を毎日提出するのですか。

佐藤取締役 「そうです。毎日職員から紙で日報の提出を受けています。入力のためにタブレット等の導入は 考えていません。作業した社員が、日報を作成する。その日報を経理担当者が内容を確認する。それを経理で データとしてシステム入力する。それを、岩木と深浦それぞれの農場でやります。その際に、予定と実行の記述が合 わない場合があり、「あれ、この作業は変だな」ということが分かります。日報の作成と日報の内容の入力作業を分 けることで、誰かが間違えていることが分かるようになっています。また、この仕組みだと、日報を出さない作業員が いることもすぐにわかるので、日報を出さない作業員には、経理から『でてない』と督促をします」

― データ入力することで分かることは何ですか。

佐藤取締役 「経理では、農薬 10 本を購入したときは、その金額を支出として経理処理しています。しかし、 農場ごとでの収益がわかりません。当社では日報に、農場ごと、農薬や肥料の使用量、収穫量、作業時間を記 入するので、それをデータとして入力することで、農場一枚ごとの収入と費用が計算できるため、どの農場が儲かっ ているかが分かります。そのデータは年末に分析し、翌年の計画作成に利用し、まとめたものを総会資料として提 出しています。また、繁忙期には社員が最大 97 名にもなります。タイムカードと日報を突合することで、職員がどこ で、何をしたかを把握することができます。何年もかけて試行錯誤してできたシステムです」

 

3.当社の強みと今後の経営展開について

当社の今後の経営展開について、佐々木社長に伺いました。

― 当社の強みは何ですか。

佐々木社長 「農地が広いこと、そして一箇所にまとまっていること。これがうちのセールスポイントです。取引した いと言って来る方たちは、そこに惹かれるみたいです。土地があるから、何でもいっぱい作ってくれると期待感を持っ てきます。今では、黄金崎農場というのは、土地がいっぱいあって、お願いすれば何でも作ってくれるという口コミが 立ち、取引先から当社に相談が来ることが多くなっています」

― 後継者については何かお考えはありますか。

佐々木社長 「内部から、やる気がある優秀な人間が昇格して、社長になるしかないと考えています。この会社 は創業したときから、他人が集まってできた会社ですしね。会社が大きいので、いろいろな事故や事件が起こります。 私は創業者だから、何があっても、仕方が無いと受け止めてきたけれども、これからの人は、そのような苦労にも精 神的に持ちこたえられることが必要です」

― 社長が今後考える経営の方向はなんですか。

佐々木社長 「もともと、岩木の農場を買ったのは、直接ここで小売りをしたいという構想があったからです。 500ha のスーパーマーケットを作るという発想を持っていました。深浦だと、どうしても人がいないので難しいので、 市場に近いところが良く、ここ岩木は青森市にも弘前市にも近く、地元に直接新鮮な野菜を販売できる。今我々 は、中間業者に販売していますが、いつでも契約が切られる可能性があり、リスクが高いと考えています。我々がお いしいものを作り、食べる人に直接我々がサービスを提供できれば、そのお客さんは絶対に離れない。ここには観 光資源もあり、観光客が将来きてくれる可能性もある。そう思っています。 それと、福祉、環境、高齢化などの問題がでてきている。これは農業と組み合わせることで解決が期待できると 思う。農業+福祉、農業+環境、農業+高齢化、これを地域を巻き込んでやり、トータルで収益をだすことがで きれば、地方にとって良い取組になると思う」

 

4.さいごに

これまで、数々の苦難を乗り越えてきた佐々木社長は、収益が回復し、経営が安定した今でも、地域が直面 する福祉の問題、高齢化問題、後継者不足の問題、そして観光による地域おこしなどを、農業と掛け合わせるこ とでなんとか解決できないか、積極的に取り組んでいるとのことです。